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宮田賀奈子
2作目はソニーピクチャーズ『ブレイキング・バッド』 ※ネタバレあり
平凡な高校教師・ウォルターはまじめな男でした。
高校で化学を教え、脳性麻痺があって杖がないと歩けず、
着替えも一人ではできなくて、軽い言語障がいがある長男がいます。
愛する妻は美しく陽気で賢いのですが、40歳を直前に妊娠しました。
ハンディッキャプを抱えた息子と、産まれてくる子供のために
教師業のほかにも洗車場でアルバイトをしていました。
自校の生徒が乗る車を洗って、生徒にバカにされつつも、
ひたすらに家族のためだけを思って生活していたのです。
しかしある日、彼はアルバイトの職場で突然倒れてしまいます。
過労でもストレスでもなく、かなり進行した肺がんでした。
自分の余命がわずかと知る彼に、妻は健康保険が適用されない
最先端の医療をすすめます。今はしがない高校教師でも、
ウォルターはかつて秀才達と共同研究をしていた優秀な科学者。
個人的な事情で共同研究者らが作った会社では働かずに
高校で教鞭をふるう彼には、仲間が逆立ちしてもかなわない
化学の才能が、天才的な頭脳がありました。それに加えて
高い自尊心もあります。そのため、妻がお金が足りない分は
かつての研究仲間に助けてもらいましょうと提案します。
しかし、ほぼ自分の頭脳から導き出した理論をもとに会社の
創設者となったかつての仲間は、傲慢かつ無神経で幼稚に思え、
どうしても助けてもらう気になれません。しかし妻もあきらめない。
結局、ウォルターは表向きにかつての仲間の援助を受け入れる
ふりをして、とんでもなく危険な副業に手を出す決意をします。
その副業とは、低所得者層向けの覚せい剤であるメタンフェタミン
通称メスの密造。偶然にも義弟・ハンクがDEA(全米麻薬取締局)に
所属していたため、コネを使って捜査に同行してメスの精製工程を
自身の目に焼き付ける。そして持てる知識と技術を駆使し、非常に
完成度の高いメスを作ることに成功する。しかし麻薬というものは
売りさばいてこそ価値があるわけで、悪のコネクションなどない
ウォルターは、かつての教え子・ジェシーがドラッグの密売を
している事実を知り、自分と組んでメスを売ってくれと持ちかける。
彼らが住む地域はアメリカ南西部。メキシコが近い地域で、
ドラッグの密売グループも複数ある。ただのチンピラあがりから、
大規模な麻薬カルテルの手先までいる危険地帯だ。
そんなところで勝手に売ったりしてみろ、たたですむわけがないと
断るジェシーに、ウォルターは何が何でも金が必要なんだと迫る。
なかばアクシデントに近い恰好で最初のメス精製後(だと、あとで
わかる)のビジュアルが! とんでもなく! おもろいのです!!
ドラマ第一話の冒頭は、一台のキャンピングカーが疾走する
場面から始まります。どういうわけか車の脇には衣服らしきものが
くっついていて、やがて中年男性がはくズボンだとわかります。
車は躊躇なくズボンを踏み、荒野を全速力で突き進みます。
さて車内に目をやると、運転席にはガスマスクをした中年男性、
助手席にはマスクをしているけれど意識のない青年(ジェシー)、
奥のほうにはマスクなしの男が二人。一人は死んでいる様子。
やがてどこからか警察車両のサイレンが。運転してた男(ウォルター)は
苛立ちながらも車を停め、肌着とシャツ、ズボンは飛んでいって
しまったため白のブリーフにハンドガンという姿で仁王立ちに。
よく、物語、特に漫画はつかみが大切とありますが、こうまで
異常で面白そうなつかみ方をしてくるとは、さすがソニー(違う)!
警察車両は消防車(だったかな?)を引き連れて、ウォルターを
やり過ごして砂塵を巻き上げていきます。消防隊員らしき男に
ふしんな目で見られはしたものの、ウォルターはとにかく後ろ手に
隠した銃をぶら下げて、つかの間安堵のため息をつくのでした。
それからはもう、あっという間に高校教師と元教え子は悪の道を
転げ落ちるしかありません。まずキャンピングカーにいた男で
マスクをしていなかった者は二人。一人は麻薬密造関係者で、
メス精製の際に排出される毒性の高いガスを吸って死亡。
もう一人は麻薬を売る時に欠かせない卸元と呼ばれる者の
一人で、けっこうな名うてでした。頑健だったためか悪運が
強いのか、同じガスを吸っても死なず、ウォルターは仕方なく
ジェシーの家(正確にはジェシーの亡き叔母?伯母?の家)の
地下室に閉じ込めます。ヤバいヤバい、とんでもないことに
なったと騒ぐジェシーとウォルターは、コイン投げで死体の処理と
生き残った男の殺害の担当を決めます。死体処理をすることに
なったジェシーは、プラスチック以外の物を溶かして処分するという
ウォルターの化学的知識に基づく指令に従いきれず、大きな
プラスチック容器を買わずに、二階にある浴槽で処理してしまい、
大参事を招くわけですが、もっと悲惨なのはウォルターでした。
コイン投げで殺人をしなくてはならなくなり、地下室に入れた男を
拘束したうえで身の上話をし合います。相手は悪党、百戦錬磨。
腹が減ったと言って食料を用意させたものの、ウォルターはがんの
発作を起こし男の前で倒れてしまい、意識の空白時間ができます。
その間に男が割れた皿の一辺をたぐり寄せ、隠し持っていると
気付いたのは、床にぶちまけてダメにしてしまったサンドイッチを
作り直そうとした時でした。ゴミ箱から皿の欠片を全て拾って
キッチンの作業台に並べて、ひとつ足りないと知ったからです。
人を殺すことに躊躇していたウォルターの決断は素早く、かつ
合理的なものでした。隠し持っていた皿の欠片に脚を突き刺され
ながらも、ウォルターは地下室の男を絞め殺してしまいます。
2016/06/09(木) 04:50 記事編集 記事削除